ちしまのにわ

かんそうノートかんそうノート

2021.02.23 Tue

ハンドメイズテイル

「ハンドメイズテイル」という海外ドラマをご存知ですか。

 

hulu独占配信のドラマで、スーパーディストピアな世界を生き抜く侍女たちの物語です。
現在シーズン3まで配信されています。
シーズン4・5も制作決定済。
配信前から結構話題になっていたので気になり始め、吹替えキャストに東地宏樹さんを発見したことで「お!見てみよ!」と思い、軽い気持ちで視聴し始めました。

 

ところがどっこい、激重なストーリーに完全に頭が持っていかれました
それも、1話目で

 

■冒頭あらすじ

主人公ジューン(エリザベス・モス)が夫(この吹替えが東地さん)と娘と共に車で”何か”から逃走しているところから始まります。
しかし追っ手に発見され、咄嗟にジューンは娘を連れて森のなかに逃げ込みます。
夫がいた方角からの銃声に怯え、身を潜めるものの結局拘束され娘は連行、ジューンは気を失ってしまいました。
そして舞台は謎の施設へ。
そこは赤い服を纏った「侍女」たちの研修施設でした。鬼教官「リディアおば」に電極棒片手に厳しく躾けられ、反抗したものは片目を潰され精神を病み、次第に反抗も出来ず従うしかない恐怖の日々を過ごします。

■侍女の役目と奪われる名前

「侍女」の役目、それは子供を産むこと。
出生率が下がり子供を授かることが少なくなってしまったため、侍女は階級の高い屋敷へ派遣され、子を授かるための淡々とした「儀式」を受け(その光景がとんでもなく異常)、屋敷の夫人の代わりに子供を産むことを強要されます。
そして産んだらすぐさま、子供はその家の夫人の元へ。
自分が産んだ子に名前をつけることも触れることも許されず、”ただ産むだけ”。
そして別の家にまた派遣される、といった人生を過ごすのが侍女の役割です。
侍女は徹底的に権利を剥奪され、ペンを持つことも本を読むことも出来ず、名前すら奪われます。
本名を名乗ることなどもちろん許されません。
「オブ○○」といったように、「〜のもの」という意味の記号のような名前だけを与えられ、その名前は仕える屋敷によって変動していきます。
ex.オブフレッド(ジューン)、オブグレン(エミリー)、オブスティーブン(ジャニーン)

■徹底的に逆らえぬ環境

脱走、亡命、反抗、何かしらしでかせば何かしらの罰が下されます。
暴行、石打での死刑、絞首刑、腕の切断、割礼、腕を焼かれる、などその罰はどれも残酷で自尊心を削ぎ落とすものばかり。
街中で怪しい動きをしようものなら、そこらじゅうにいる軍人が発砲・射殺。
それだけではなく、処刑された遺体が街の中で吊るされていたり精神的な攻撃も抜かりない。
最初は抗おうとする者でも、身体的・精神的に追い詰められることでじわりじわりと心が殺され、結果的に抗う気力すら失くさせていきます。
「目」と呼ばれる監視組織もスパイのように潜んでいるので、同じ家に住む者だとしても信頼しきれずに疑心暗鬼のなか過ごしていくことになります。

■「フィクション」と線を引いて見ることができない

こういった作品を見ていると、なぜだか私たちは「こんなこと、起こるわけないじゃ~~~ん」と無意識にどこか慢心めいた気持ちで見てしまうもの。
しかし、ここまで極端なディストピアなのに「こんなこと起こるわけない!」と言い切れない気がしてくるのがこのドラマの恐ろしさです。

この国、名を「ギレアド」といいますが、実は元はアメリカ。
超原理主義者によってクーデターが起こされ、わりとあっさり国家が転覆し、ギレアドが誕生。
主人公ジューンは編集の仕事をしていたバリキャリの女性で、周りの女性たちも各々自立しているような我々の持つ「現代」のアメリカ像そのものですが、まず最初に女性の銀行口座が凍結されて経済力をごっそり奪われ、そして働く女性は全員が同じ日にリストラされ職を失いました。
抗議する事は許されず、上司たちも「仕方ないんだ、分かってくれ」といった空気。
「なんだか最近不穏な感じがするね…?」という違和感の日々が、実力行使により一気に現実と化し奈落の底に突き落とされます。
もちろん反発した人々によるデモも起こるものの、「軍人は何かが起こった時のために居るだけで、自由に主張させてくれるでしょ」という安全神話のようなものも、容赦ない発砲と射殺で一瞬にして崩れ去りました。
「何かがおかしい」と思った時には既に抵抗できない条件が揃ってしまっているのです。

そういった国家転覆までの様子は、ストーリーの中で回想シーンとして時々明かされていきますが、それがよりリアルさをプラスし、「ただのフィクション」として見ることができません。

■さまざまな立場のキャラクターたち

闘おうとする侍女。
不遇な生い立ちから、寝食の心配がなく今の方がいいと考える侍女。
すべてを諦めてしまった侍女。
ギレアド建国を先導した夫婦。
侍女を助けようとする裏の組織。
スーパー鬼教官リディアおば(この物語のキャラクター大賞と思えるくらい凄いキャラ)

様々な立場、想いが交錯していきます。
グレーがかった世界に映える侍女の赤と夫人の青、その映像も美しく、出演者の細やかな表情の演技も凄まじく、毎回異なる曲のEDが非常に凝っているのも見どころ。
内容が内容なので、見るのはしんどいです。
かなり精神的に持っていかれる内容ですが、夜に集中して見ることをオススメ!
というより、知らぬ間に集中しちゃうので”ながら見”が出来ません。
しんどいのに気になって気になって続きを見てしまう、そんなドラマです。
「果たしてこれを”ドラマの中のファンタジー”と片付けられるのか」
そんな事を感じずにはいられないと思います。

で、ここからはちょっと登場人物の突っ込んだ話を!
ネタバレ含みますからご注意ください!

ジューン

ジューンはとても強い女性です。バリキャリです。
何度も絶望に落とされて心が死にそうになるものの、小さな希望を見つけて何度も自分を奮い立たせる姿が印象的。
「屈するものか」と腹の底には炎が煮えたぎり、ウォーターフォード夫人へちょっとだけ嫌味な発言をしたり何ともいえない表情を浮かべたりします。
一人娘のハンナを連れていつかギレアドを脱出しようと、規律や信仰に従うだけのいい子ちゃんでは居ません。
ジューンを演じるエリザベス・モスの表情と目の演技は圧巻です。
と同時に、それを再現(という言葉は適切ではないかもしれませんが)どころかさらに乗せてより狂気的なキャラクターにしている吹替の声優さん(本名陽子さん)が素晴らしいです。

ウォーターフォード夫人(セリーナ)

ジューンが仕える屋敷はギレアド建国を先導したウォーターフォード夫妻の家。
なんかジェントルなヒゲを生やしたフレッドと、美人で冷酷でツンデレ女王(ジューンに対して)のセリーナ。
シーズン2ではセリーナの心に迷い?後悔?疑問?が浮かんできます。
たしかに、出生率が低くなって少子化が深刻になった世界をどうにか打開するために活動をし、夫とともに悲願を達成したものの…。
建国前はスピーチを共に考えたり、一緒になって努力してきたのに、”夫には絶対服従”となった世界でフレッドは共に考える事をしてくれなくなった。
なんなら、”男の仕事だから君は下がりなさい”といった態度をしてくる訳です。
シーズン2の後半でセリーナとジューンはお互い協力して原稿を書きますが、その姿がセリーナもジューンもなんだか楽しそう。
立場が立場なので仲良くなることはできないけれど、きっと出会い方が違えばいい友達になっていただろうと切なくなるシーンでした。
こんな世界にしたのは他ならぬ自分達であるのでセリーナは後悔もしたくないのだろうと思いますが、まぁそこは思いっきり後悔して欲しいですね!!笑

超ヘタレ主人フレッド

フレッドに関しては、見れば見るほど知れば知るほど「コイツ、ひどい奴だな!!!」としか思えなくなります。
建国前の活動の姿を見ていると、圧倒的にセリーナの方が出来る人である!!
頭も切れるし堂々としていて迷いも一切ない。それに比べてフレッドは頼りないことこの上ない。
セリーナが居なければ活動出来なかっただろう、と誰もが思うはず。
そのクセ、現在は与えられた権力に酔ったような雰囲気。
そんなフレッドの印象的な出来事がありました。
シーズン1でジャニーンが産んだ子供がシーズン2で命の危機を迎えます。
ギレアドの医師ではどうにもできない状況で、「現在は女中をしているが有能な医師がいる。その医師に診せたい」とセリーナはフレッドに持ちかけます。
しかし、女性が働く事を許さない国!それがギレアド!!
フレッドはあっさり断ります。”祈ろう”とかそういう事しか言いません。
こりゃ無理だと思ったセリーナはジューンと協力して夜間に屋敷を抜け出しし、女中に子供を診せます。
(この女中が久しぶりに白衣を着るシーンがまた印象的なんです…見てください…)
後にフレッドにバレますが、「子供のためにできる事をした」と話すセリーナに対し、フレッドがした事は”夫に逆らったから妻をベルトで滅多打ち”。
もうフレッド、お前よ、お前にとってなにが大切なんだ!?!?!?
人類の宝である子供か?信仰か?妻か?
いや、違うな?
権力を持ったお前自身だな!?!?!?
と、本当に石ぶん投げたくなるようなフレッドさんです。

この夫婦にはシーズン3でかなり大きな動きがありました。
2人がなにを思い、なにをするのか。そのあたりをしっかり見せてほしいと思います。

ジューンの夫と親友

ルークはジューンの夫ですが、実は生きておりなんとか脱出してカナダへ亡命します。
親友のモイラは研修施設を脱走したのち、ギレアドの偉い人たちが集うパブのような店に勤務させられ現実に絶望。
なんとかまぁこの世界で生きるしかないわね、、と諦めの気持ちが強かったものの、ジューンの強い気持ちに揺さぶられてひとりカナダへの亡命に成功します。
このシーンがとても印象的で、雪の積もる極寒の森を抜けて民家?へ逃げ込み、車のナンバーを確認するとそこはカナダであることが判明!
その場に倒れ込んで笑うんですよね。
シーズン2ではカナダで苦悩する彼女の姿も描かれます。

リディアおば

忘れちゃならないのはこのドラマのスーパーキャラクター鬼教官のリディアおば。
とにかく厳しいです。
厳しいし理不尽だし侍女への躾は徹底してます。
最初はただの嫌なおばさんといった印象でしたが、ジャニーンが自分の産んだ子を連れ出し、身投げしようとした時。
その後侍女たちによる石打で死刑にされそうになったジャニーンに
“殺す事はできない”と侍女たちが反抗した時。
リディアおばが見せる表情、言動に少し慈悲というか…情のようなものが見えました。
厳しいのは変わりません。
反抗的な者には電極棒ビリビリさせちゃうし、例え妊娠していても反抗するならば産まれるまでは侍女とベッドを鎖で繋いで監禁するし、やる事はとんでもなくエグいです。
ただ、このとんでもない世界の中で主人や信仰に従い反抗させず、せめて無事に暮らせるようにしてあげたい、、
そんな風に考えているのではないかなと思いました。
ギレアド建国前のリディアおばの姿もシーズン3で見ることができます。
なんだか悲しい雰囲気ですが、とはいえ暴力的なことは許されないので…今後どうなるのか非常に注目したいキャラクターのひとりです。

 

というわけでとても長くなりましたが、現在も進行中の海外ドラマ「ハンドメイズテイル」のかんそうでした。
シーズン4がスタートしたら、全話視聴したのち?か1話ごと?か、どちらかのスタイルでかんそうを書いていこうと思います。
今からでも間に合いますよ!気になる方はぜひご覧になってみてくださいね!
(わたしのまわりで見ているひと全然いなくてかなしい)

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