ちしまのにわ

かんそうノートかんそうノート

2021.08.06 Fri

儚い羊たちの祝宴

ここひと月ちょっとで、私の中で読書ブームが巻き起こっております。
元来映画好きで海外ドラマなどもよく見ますが、ひとりで集中して気ままにみる時間がとれないこともあって本にたどり着きました。(活字読みたい欲は不定期でやってきて、そのたび1〜2冊読んではいる)
開いて読み始めればすぐに他の世界に飛ばしてくれるので、なるほどこれはいいぞと思い、現在8〜9冊ほど読了。
その中から一番のお気に入り、米澤穂信さんの「儚い羊たちの祝宴」のかんそうです!
(ネタバレなし)


「儚い羊たちの祝宴」は、とある大学の読書サークル「バベルの会」をめぐる、五つの事件の短編集。
どの短編にも、バベルの会がちらちら見え隠れします。
身内に不幸がありまして
北の館の罪人
山荘秘聞
玉野五十鈴の誉れ
儚い羊たちの祝宴
この五つの物語、どれもよくできていました。


「衝撃のラスト!」「大どんでん返し!」「ラスト○分衝撃の結末!」といった謳い文句の映画を山ほど見てきたので、本でもそういう系統を求めがちなのですが、やはりそういうものを見過ぎたせいもあって『○○ってこういうことかも』『○○って実は××?』などと結構予想できるようになってしまったんですよね。 そのまま文字を追うだけではわからなくても、その物語のなかにある空間を想像してみると気付いてしまう、とか。 なので、最近読んだ本でもそういうことが頻繁に起こっていました。 “まさかまさか?アレでは??いや〜、違うと思いたい…あ、違うかも!………あぁ、やっぱそうだったか。” と思うことが何度かありました。


がしかし、「ラスト一行の衝撃」と銘打たれたこの作品は、どれも予想外で綺麗に騙されたな〜!という感覚。 分かりそうで分からない、けど確実に不穏なことが起こっている…そういう空気感に満たされたお話ばかりでした。


なかでも好きなのは、「北の館の罪人」と「山荘秘聞」。


「北の館の罪人」

身寄りのなくなった主人公が実は富豪の隠し子で、その家の北の館で軟禁状態の人間の世話を任され、不思議なおつかいを頼まれる…といったストーリー。
次々に頼まれる不思議なおつかいはちょっとだけ「注文の多い料理店」を思い出します。
家庭内の人間関係もわかっていくなかで、その軟禁状態にある住人と主人公は少しずつ打ち解けていくような様子も見受けられますが、それがある出来事で一気に結末へと加速します。
ある種、清々しさすら感じる終盤でした。

「山荘秘聞」

お屋敷の使用人をしていた主人公が別の家の別荘管理を任されるところから始まります。
毎日決められたルーティンで無駄なく、かつ完璧に別荘のメンテナンスをこなすかなり有能な主人公ですが、しばらく経って、お客様はおろか主人さえ現れないことを不思議に思います。
そんなとき雪深い別荘の近くで遭難者を見つけ、物語は不穏な空気に満ち始めるのです。
淡々とした不気味さがあるお話ですが、最後には「え…?」と一瞬考え込んでしまい、気付いた時に「あぁ!そういうことか!」とヤラレター!感が一番大きかったですね。
なるほど確かに、と笑いたくなってしまう、そんなお話でした。


この2つ以外のお話もとてもよく出来ていて、不穏さがず〜っと漂っているのでそういう空気感の作品が好きな方には非常におすすめです。
オムニバスドラマとして映像で見たいな〜!と思う一冊でした。


 PREV

一覧へもどる

NEXT 

#そのほか のほかの記事

2021.03.23 Tue
弱井トト子はかっこいい
2024.01.09 Tue
舞浜旅レポ -マーベルスペシャルルーム-